演劇は儲からないので、生計を立てられず悩ましい 演劇は、裾野の広い分野です。

役者という仕事も、明日から「自分は役者です!」と元気に名乗ってしまえば誰でも役者になれてしまうのです。しかしその仕事で飯が食えるか、というと、ほとんど希望は無いようなものなのです。演劇は、観に来てくれる人、劇場に足を運んでくれる人がいて、初めて現金収入が得られます。例えば、それで評判を呼んで、企業などのスポンサーがつくかもしれませんし、もしかしたらDVDなどで映像化される可能性もゼロではありませんが、それは砂漠の中からダイヤが一粒発掘されるようなモノであり、まず儲からないことが大前提なのです。役者として舞台に立つにしても、

まず基礎基本が無ければ声も出せませんし、思うように体を動かして表現することもままならないことでしょう。

そのために、役者を志すのであれば専門教育をしている学校に入るか、養成所のオーディションを受けて厚い壁を突破し、自分の技術を磨かねばなりませんし、その時点でまず自分にかなりの投資が必要になります。そして、演技力や容姿を磨きながらやりたい分野を探したり、既存の劇団に入るか、自ら劇団を立ち上げる、という方向に進んでいくのです。

しかし、実際に演劇は儲からない仕事です。

それを生計を立てるための仕事に出来る人たちは、全体のひと握りです。殆どの演劇人はアルバイトで生計を立てて、そこから費用を捻出して劇場公演を開催したり、大きな劇団や制作会社の作品のオーディションを受けて役を勝ち取り、出演しているのです。もし、運よく役を得たとしましょう。もてはやされるほどの評判を呼べたら超ラッキー!しかしそれがまた次の作品でも得られるとは限らないのです。オーディションから受け直して、稽古を重ね、やっと本番を迎えた、と思っても、モブの一人で終わってしまうかもしれません。テレビや雑誌などの世の中のメディアに取り上げられている演劇は、実はごくごく僅かな、業界の中でもトップオブトップなのです。

だからと言って、演劇に魅力がないわけではありません。

狭いステージの上でさまざまな世界や時間軸、交錯していく人生が紡ぐ物語の臨場感というものは、演じる側も観る側も魅了し、一度でもそれに触れてしまったら、感動してしまったら、抜け出すことが困難な迷宮です。そのためにその世界を目指す若者は後を絶たず…しかし前述のように困難な世界であることには違いないのです。生計を立てるのが困難な「仕事」に疲れ、諦めて離れていく人も少なからずいます。生計を立てるためのアルバイトが本業になってしまう人もいます。その中でも、諦めずに続けていく人の中から、30歳を過ぎたあたりでスポットライトを浴びたようにメジャーになっていく人も、時には現れるのです。しかし、その人気も、これから一生続くのか、と言われれば、それは否でしょう。

来年の今頃、仕事があるかもわからない。そんな不安定な仕事なのです。

よほど腹をくくって貪欲に勉強し、自分の存在を外に向けて発信し、演出家やプロデューサーの目にとまるための努力を続けるというのは、それが叶うかどうかも分からない闇の中を突き進むしんどい時間になることでしょう。将来の保証もない、儲からないしんどい仕事だから、といって誰もその世界を目指さなくなってしまったら、芝居の世界はきっとつまらないものになってしまうことでしょう。そこを目指していく若い世代(たまに脱サラしてとんでもない活躍を見せてくれる逸材もいますが)が次々に出てきてくれるのは有難いこと。

もし我が子が「役者になりたい、そんな世界を目指してみたい」と発言したら…快く背中を押してやれるか、と言われれば、正直躊躇してしまいますが、芝居の世界は刺激的で面白いことは間違いないのです。その裏側に、悩ましいことが隠されていることにより、スポットライトが当たる場所はより一層眩しいのでしょう。