俳優になるために、ぜひとも身につけなければならないのが演技力ですが、一朝一夕で身に付くものではありません。

その場限りでない確固とした演技力をつけるにはどうしたら良いのか。

それは、俳優訓練・実技訓練の目的を見失わないことにあります。

俳優は技術職

俳優の仕事は何かと考えれば、それはやはり演じることです。

では、「演じる」とは何かというと、観客を感動させたり、その役に命を吹き込むことであったり、自分自身を表現することであったりと、さまざまな定義付けができるでしょう。

しかしその定義は、厳密に言うと演じたことによって生まれる結果です。

では、何のために演じるのかというと、これは共通していて、作者の言いたいことを伝えるためです。作者の言葉は作者の数だけあり、また演出家によっても伝え方は異なります。そのいずれにも対応できるよう、俳優は演じる上で技術を持たねばなりません。

どんな役でも作者の言いたいことをしっかり表現できる、そんな技術を持った役者になって初めて「演技力がある」俳優として重宝されることでしょう。

あるいは監督や演出家の「お気に入り」になれば、仕事は入ってくるかもしれません。

しかし、気に入られることばかりに気を取られ、自分の実際の演技力をつけることをおろそかにしてしまっては、俳優としての誇りは保てません。

では技術を持った実力のある俳優になるにはどうしたら良いかというと、それはやはり訓練を積むということです。

俳優訓練とは

専門学校や養成所に通うと、その訓練所独自の演技論があり、訓練法があると思います。

また、世界的に取り入れられている訓練法を用いているところも多いでしょう。

心を動かす演技をするために読んでおくべき教本

俳優訓練の一番の目的は、人間が生きていく過程で自意識によって抑えられ、潜在化している豊かな感情を解放するということです。

普段人は、なるべく感情的にならないように生きています。

感情的になるということは、心身のコントロールが効かなくなる、恐ろしい状態だからです。

ところが俳優は、演じるにあたって感情的になる必要があるのです。

注意したい点は、この訓練は感情の解放が目的ではないということです。

解放は訓練の過程であって、演技に結びつかなければ意味がありません。

感情解放は演技にとって必要不可欠な要素である

これと同様に、発声については腹式呼吸で大きな声を出すことが俳優訓練ですが、発声訓練そのままの声でせりふを喋るわけではありません。

訓練は飽くまで訓練。基礎は飽くまで基礎です。

実際の演技に活かすことができなければ、意味をなさないものです。

実技訓練とは

実技訓練とは、主に自分の身体を知るための訓練で、ジャズダンスやクラシックバレエ、日舞、器械体操、ヨガなど、その養成所で必要と考えられるものが取り入れられています。

そのいずれもの、ごく初歩を学ぶことになりますが、こうしてさまざまな動きを体験することによって、まずは自分の身体がどれだけコントロールされていないかを知ることになります。

こうしたレッスンは、ダンスが上手くなるために受けるのではなく(上手くなるに越したことはありませんが)、自分の身体を知り、身体感覚を敏感にすることが目的です。

ただしミュージカル俳優を目指すのであれば、ダンスや歌唱の訓練は上記の目的に留まりません。

心身の感覚を敏感にする

感受性が強いことは、演技をするにあたってとても大切なことです。

いくらたくさんのレッスンを受けていても、自分自身が鈍感なままではいくらやっても演技力は身に付きません。
演技に還元できないと言い換えてもいいでしょう。

レッスンを受けているということで安心してしまってはいけません。

俳優は、実際には24時間ずっと訓練していると言っても過言ではないでしょう。

朝準備するときも、食事をするときも、アルバイトをしているときも、常に心身を敏感にして、あらゆる体験を経験値に換えてください。

そうすることで、実際的な演技力が身に付いていきます。

演技力を身につける簡単な方法はありません。

いつも、この瞬間も訓練と思って、着実に積み上げていくしかないのです。