「感情解放」という言葉を聞いたことがありますか?

感情解放とはありのままの自分をさらけ出して表現することを言い、プロの演技をする俳優にとってとても大切な要素です。自分をさらけ出し表現することが苦手だと言う方もいると思います。

ではどうして演技をする上で感情解放が必要なのでしょうか。

感情解放は喜怒哀楽にとどまらない

感情と聞いて思い浮かぶのは喜怒哀楽だと思います。しかし、人の感情というものはそんな単純なものではありません。

喜怒哀楽の中にも複雑に入り交じった様々な感情があります。

例えば大好きな人と接するとき、大好きなことをストレートに言える人もいれば、素直になれず、なんとも思っていないフリをする人もいます。

本当はとても悲しいことがあったのに、それを隠して笑っている人、とても仲のいいママ友のフリをして、本当はねたんでいたり、そんな自分が情けなくなったり。

基本の喜怒哀楽を使って見てみましょう。

「喜び」プレゼントをもらって喜んでいる人、嫌いな人に不幸なことがあって喜んでいる人。

「怒り」誰かに大切な物を壊されて怒っている人、自分にとって大切な子どもが危険なことをして怒っている(叱っている)人。

「悲しみ」失恋をして悲しくて泣いている人、試合に負けて悔しくて泣いている人。

「楽しい」大好きな友人たちとパーティーをして楽しい気分の人、自分より弱いものをいじめて楽しい気分になる人。

例を挙げればキリがないほど、人の感情というものは表裏、キレイなものから汚いものまで複雑に入り交じっているのです。強い自分も、弱い自分も、汚い自分も、恥ずかしい自分も全てさらけ出すことができるということは演技をする俳優にとってはとても強い武器になるのです。

感情解放ができれば心を動かすが演技ができる

俳優には、TVや映画で活躍している俳優、舞台俳優、声だけで演技をする声優など、いろいろな仕事があります。

どの俳優にとっても感情解放ができている人とできていない人の演技には大きな違いがあります。

感情解放ができている俳優の演技には、人を惹きつける何かがありますし、演技をしている俳優自身も心を動かされているのが分かります。

しかし、感情解放できていない俳優の演技はどうでしょうか。

悲しんでいる役だからただ涙を流せばいい、怒っている役だから大声を出せばいい、面白い役だからただ笑っていればいい。

これでは外面だけのつまらない演技になってしまい、とても観客の心を動かすことはできません。

きっと、演技をしている俳優自身も、後から自分の演技を客観的に見るとつまらないと思うでしょう。

声だけで演じなければならない声優は、吐息だけでも感情を表現できなければならないのですから、外面演技では何も伝わりませんね。

感情が1~10まであったとして、5まで感情解放ができる俳優と、10まで感情解放ができる俳優、あなたならどちらの演技が見たいと思いますか?

感情解放が苦手な人

演技に不可欠な感情解放ですが、苦手な人はたくさんいると思います。自分の中の汚いものや、恥ずかしい部分をさらけ出さなければならないのですからとても勇気がいることですね。

感情解放が苦手な人はどうして自分が苦手なのか、どういった部分が苦手なのかを考えてみましょう。

大勢の人の前で恥ずかしい、失敗して笑われたりしないだろうか、他の俳優さんや観客にどう思われるだろうかなど、いろんな気持ちがあると思います。

そんな人はどんな種類の感情も恥ずかしくて苦手だと思うかもしれませんね。

もう1つ、過去にトラウマがあったり、育ってきた環境によってはある特定の感情だけ表現するのが苦手だという人もいるでしょう。

そういった人は自分の中で「人に嫌われないようにニコニコしていなければならない」、「男の子は泣くものではない」といったルールを作ってしまっている場合があります。

トラウマだったり、自分の中で作り上げてきたルールというものは、すぐに変えられるものではなく、この感情だけは人前で出したくないと思ってしまうのです。

苦手を克服し心を震わせる俳優になろう!

感情解放が苦手だからいい役者になれない。

決してそうではありません。

自分の中の苦手な感情を見つめなおし、認めてあげましょう。

その上で感情解放できるようにトレーニングすればいいのですから。

まずは演技をするときは、カバンの中にでも、テーブルの上にでも、「自分」を置いてきてください。「あなたらしい」とか「あなたらしくない」とかよく耳にする言葉ですが、それはあなたではなく他人からの評価であり、そう言われることによって自分はこういう人間なんだと言った思い込みです。

そんな自分はいったん置いておき、まっさらな自分としてその役になりきるのです。

感情解放することによって笑われたりしたらどうしよう、バカにされたらどうしようといった負の感情(ほら、これも感情ですよ?)は受け止め方を変えましょう。

笑われたは、笑ってくれたと置き換えるのです。

自分の演技に無反応ではなく、笑ってくれたのです。

演技に対して何も感じなかったわけではなく、心を動かしたのです。

過去の経験から特定の感情を表現するのが苦手な人は簡単に切り替えることは難しいかもしれません。

しかし、過去の自分より今の自分のほうが成長しているはずです。

少しずつでいいので、自分の感情を素直に認め、表に出す練習をしていきましょう。自分の汚い感情や、悲しい感情を認めるということは嫌な気持ちになるかもしれませんね。

でもそんな感情を持っているのはあなただけではないのです。

自分の嫌な部分も全て認め、感情解放することによって初めて、どんな役にもなりきれる、心を震わせることができる俳優になれるのです。