「ちーちゃんはちょっと足りない」は2013年に秋田書店が発行している季刊女性漫画雑誌「もっと!」で連載していた漫画で、現在週刊ビッグコミックスピリッツで連載している漫画「月曜日の友達」の作者である阿部共実さんが手掛けました。
巻数にすると1冊だけとなる漫画ですが、数々の人々を魅了した人気作品として知られています。

その人気は2014年の第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞の受賞や2015年の宝島社「このマンガがすごい!」2015年版オンナ編の第1位作品として輝いた事が何よりの証拠です。

そんな「ちーちゃんはちょっと足りない」のあらすじをネタバレを交えながら書いていきます。

南山千恵こと「ちーちゃん」は中学2年生の女の子です。けれど体も小さく、言動も幼く、そのうえ知力も足りないせいで簡単な計算もできない女の子でもありました。とにかく少し足りない部分が多いちーちゃんですが、幸い、彼女の周りのクラスメイトたちは優しかったので何とか学校生活は出来ています。特に内向的で気弱な性格の小林ナツと口下手だけど友達思いな旭とは仲が良い友人となり、3人は仲良く中学生の生活を送っていました。

ところがある日、ちーちゃんとナツが2人で学校から家へ帰る途中、クラスメイトの藤岡から「万引きしないか」と声をかけられます。その際にナツは店で見かけたリボンが欲しくなりますが、持っているお金が足りずに諦める事にしました。しかし「手に入れたい」という思いは晴れる事はありません。

一方、旭は藤岡たちから煙たがれていました。

それは藤岡が教室で女子バスケ部の顧問の誕生日プレゼントを購入しようと部員たちから集金していた姿を見て「学校でお金のやり取りをすべきじゃない」と忠告したからでした。

しかしその日の放課後、旭の懸念が的中します。

藤岡が集金した3000円が盗まれるという事件が起き、事情を知る生徒たちは犯人探しに奔走します。その3000円はちーちゃんの手にあり、彼女はナツにお金を差し出していました。彼女はお金を盗んだ事を悪いとは思わず、姉が何気なく放った「ナツちゃんには恩返ししようね」という言葉通りにナツを助けるために差し出していたのです。ナツは即座に事態を把握しますが、リボンが欲しいという気持ちを前に自分が子供である事を言い訳にしながらそのお金を受け取るのでした。
その日からナツの心は歪み始めます。

膨張していく自己嫌悪と罪悪感、仲が良かったのに破綻していく人間関係、そして遠ざかっていく友人たちを前にナツの精神は追い込まれていきました。そして次第にちーちゃんに対して敵意を抱くようになりますが、ちーちゃんがいなくなった事を知ると彼女はちーちゃんの姉とともに探し回ります。最後に無事にちーちゃんを見つけたところで物語はハッピーエンドで終わります。
「ちーちゃんはちょっと足りない」の見所は中盤の事件によって孤立していくナツの心境です。

可愛いリボンを身に着ける事で精一杯のオシャレをしたナツは皆が注目してくれると期待しますが、誰も振り向かない現実に胸を深く穿たれます。それどころか購入したお金が盗んだものであったため、現状への劣等感と不満とともに深い自己嫌悪に苛まれるのでした。

この時のナツの心境は嫌悪を感じる反面、共感もできます。

言葉にしてしまえば「他の人のように上手くいかない」や「頑張っても報われない」といったように平凡になりますが、その平凡が耐えられないほど苦痛を感じる時があります。耐えられないあまり、無関係な他人のせいにしてしまったり不幸をまき散らしたいほどの憎悪に駆られたりします。そんな悪意や欲望を抑制しながら生きる事に対して人は折り合いを見つけていくものだと思います。

その道中が優しいものでなくとも、どうか「安らぎあれ」とナツのこれからのように祈るばかりです。