アニメ映画「時をかける少女」や「おおかみこどもの雨と雪」など世間の話題となる作品を手掛けている細田守監督が初めて作った長編オリジナル映画「サマーウォーズ」、2009年の夏に全国で公開されたこの作品は観客動員数123万人越えの達成や第42回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門(Gertie Award)最優秀長編作品賞など数々の入選や受賞を果たしています。その人気は時が経ても色褪せず、シネマを地上波で放送する番組「金曜ロードSHOW!」では合計3回も放送されており、その度に高視聴率を獲得しているほどです。

そんな「サマーウォーズ」の主人公である高校2年生の小磯健二は数学が得意な内気な少年です。

性格は平凡ですが、数学に対する能力は天才の領域に達しています。実際に国際数学オリンピックの日本代表になれる実力派あるものの、選手になれるチャンスを逃してしまったと作中で語られていました。その計算能力が彼を物語の重要な舞台である仮想世界OZの大事件に巻き込まれていく要因になってしまいますが、同時に大事件を起こしたハッキングAI「ラブマシーン」が仕掛けた最後の嫌がらせを阻止する力にもなっています。

クライマックスでは陣内邸に落下しようとする小惑星探査機「あらわし」を阻止するために健二は羅列する膨大な数字を暗算で解読していきますが、その膨大な量と迫りくるタイムリミットに追い詰められた彼は最後は鼻血を出しながら「よろしくお願いしまーすっ」と叫びました。

自分の命だけでなく、他人の命も背負っている彼のその時の状態はいわば極限状態です。

そんな状態であれば体に異変が起こるほどの興奮や集中になってもおかしくはありません。しかし「興奮しすぎて鼻血が出そう」という言葉をよく聞きますが、それは二次元の世界の演出というイメージが強く、現在の医学でも「興奮が鼻血の原因になるのは考えられない」という説が一般的です。

ですが反対に「興奮によって鼻血は出るかもしれない」という考えもあります。

人間は強い興奮を覚えると交感神経が活発になり、アドレナリンが大量に分泌する働きを持っています。アドレナリンは人間の生存本能を呼び起こし、同時に全身にストレス反応を引き起こす効果があるホルモンです。他にも運動器官への血液供給の増大や血管拡張、皮膚や粘膜の血管収縮、消化管運動低下、瞳孔散大などの効果があります。興奮状態になった人間が痛みを感じなくなる事がありますが、それはアドレナリンのおかげです。

この場合は万人にもたらせる効果とは言えませんが、鼻血とアドレナリンが関わっているポイントは心臓の動脈拡張による全体的な血圧の上昇です。血圧が上昇すると血管には相応の負担がかかります。その負担に耐えられない部分は破れてしまい、出血してしまいますが、それを踏まえると鼻の内側はまさに「アドレナリンの働きに耐えられない部分」です。

鼻の内側には粘膜がありますが、他には何もありません。

一応鼻毛が鼻の内側をカバーする役目を持っていますが、鼻の粘膜を完全に守るには少々役不足と言えます。「鼻をかみすぎたらいけない」とよく言いますが、それは鼻をかんで鼻の粘膜が破れてしまう可能性が高いからです。つまり鼻は興奮状態になったら出血してもおかしくないということです。

以上の事を踏まえると、健二が暗算しながら鼻血を出した理由は強い興奮である可能性が十分あり得ます。

先述したように健二は自分の命だけでなく、他人の命を背負っている状態でした。それから脱するには画面にある暗号を解読するしかありませんが、それをタイムリミット内で成功するには量子コンピューターに頼るのが確実な方法です。要するに人間、しかも高校2年生の子供には不可能な話だったのですが、それをやり遂げた彼のストレスは想像を絶するという事です。